ベンゾジアゼピン系薬の危険性
向精神薬の中ではもっとも安心・安全と称され、よく使用される薬がベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系の薬です。
ベンゾジアゼピン系は、不眠時によく利用される「睡眠薬」、不安が強いときに処方される「抗不安薬」によく利用される馴染み深い薬です。
基本的に、睡眠薬と抗不安薬の作用機序は、ほとんど同じで、GABA神経に作用して鎮静作用を促進することで興奮を鎮め不安を取り除いていきます。
そんな、安全な薬と呼ばれる薬ですが、実はその依存性の強さと致死量の高い危険性を秘めている事を、若い人を中心にあまり知られていません。
ベンゾジアゼピン系の薬は、その危険性の高さから長期服用は禁止されているため、処方量はそれほど多くはないのですが、日本ではそのような規制もないため断トツ的に処方されています。
複数処方も行われていたのですが、近年やっと複数処方の規制がでたばかりで、日本の精神医療の低さはまだまだ改善はされないでしょう。
2016年のフロリダ州における薬物関連死の調査では、ベンゾジアゼピン系はコカインについで薬物死が多いことが明らかになりました。
「ベンゾジアゼピンはコカインの次に人を殺す可能性が高い薬剤である。ベンゾジアゼピンは、2016年にはフロリダ州においてオキシコドンよりも2倍多くの死亡原因となった。オピオイドと同様に、ベンゾジアゼピンは呼吸を抑制し、過量摂取をすると呼吸を止める原因になる」
また、日本でも、2010年東京都監察医務院が調査した、東京都内の不審死者から検出された薬物・医薬品をみても、
医薬品(51.8%)、エタノール(40.2%)、一酸化炭素(3.8%)、青酸(2.3%)、覚せい剤(1.9%)
という結果になっていました。
うち医薬品の内訳は
睡眠剤(36.2%)、精神神経剤(36%)、抗てんかん剤(9.4%)、解熱鎮痛消火剤(3.0%)、アルカロイド(0.7%)、その他(14.7%)
となっており、精神科で処方される薬の危険性の高いことが見て取れます。
ベンゾジアゼピンの依存性は、LSD,大麻などよりも高く、覚せい剤(アンフェタミン)やアルコールとほぼ同等であることもあまり知られていません。
そのため、長期服用すると、その依存性の高さが顕著となってくるため、覚せい剤と同様、手放すことに不安を感じやすくなり、断薬を困難にさせる一つの要因ともなっています。
一時栄華を誇っていた華原朋美さんも、小室哲也氏との破局後の2000年頃、睡眠薬をラムネのように食べていたといいます。その結果、精神的にも不安定な状態が続き、奇行な振る舞いが多く、ついに事務所から契約解除とされてしまいました。
今でも、睡眠薬は手放せないようです。。
契約後は別人のようにろれつが回っておらず、後遺症がでているもよう。
ベンゾジアゼピン系の減薬
ベンゾジアゼピン系の減薬は、「アシュトンマニュアル」が有名です。
メカニズムや方法も以下で簡単に説明にしています。
https://www.benzo.org.uk/amisc/japan.pdf
ベンゾジアゼピン系の長期服用のメカニズム
ベンゾジアゼピン系薬剤を長期利用すると、GABA神経の受容体が減少し、それに伴う自律神経系の抑制機能の低下で脳が構造的、機能的変化を起こし、依存・耐性が形成されます。
アシュトン・マニュアルによると、2~4週間以上の使用で依存・耐性が形成される可能性があるようです。
脳の機能低下を薬が支えているため、薬を止める事で自律神経が暴走し離脱症状を引き起します。
脳の変化を元に戻すことが、依存から抜け出すカギで、脳の回復には受容体の回復をじっくりかけて待つ必要があります。
しかし、長期服用(数十年)、大量服用の人ほど、受容体の数の減少が大きくなるためか、効果の実感が効きにくいようです。
そういった方は、受容体の数が大幅に減少している可能性があるので、受容体の回復を待ちながらゆっくり減薬していく必要があります。
ただし、やっかいなのが依存症の効果で、抗不安薬を長期服用すると不安が強くなり、薬を手放すことに躊躇してしまうことです。
不安を軽減するため、ストレッチや運動、瞑想法などで不安を日頃から軽減して取り組んでいく必要もあります。
ベンゾジアゼピン系薬減薬時の注意点
いざ、ベンゾジアゼピン系の薬を減薬しようとしても、怖いのが離脱症状です。
基本的に、向精神薬は離脱症状があって当然と思ってください。
何も知らない方は、いっきに断薬してしまうことが多いのですが、急に薬がきれると離脱症状に襲われ苦しむ場合もあります。
まだ、薬に慣れていない少量時の時なら、それほど負荷にはなりませんが、服用期間が長く、大量に処方されるほど、潜在的に高まった交感神経が薬で抑え付けられているので、薬を急に抜くといっきにその抑圧が解放され、その衝動により動悸やパニック、自殺衝動を発症する可能性が高くなります。
それは、もはや抗不安薬ではなく、不安増強剤となっているのです。
ですので、基本的に向精神薬を減らすときは、段階的に減らしていくことが大切です。
薬の量が減っていくほど、だんだんと症状は良好な方面へと進んでいきます。
また、抗精神薬、抗うつ薬と違い、ベンゾジアゼピン系薬の「力価」に注意しなければなりません。
力価とは、薬の作用する力の量のようなもので、力価が強いほど減薬時の減薬量に気を付ける必要があります。
2-1.力価
例えば、同じベンゾジアゼピンの薬を1日にアルプラゾラム3.2mgとジアゼパム5mg処方するとします。
この場合、アルプラゾラムのほうが量が少ないため、こちらの服用量のほうが軽いと思いがちです。
しかし、アルプラゾラム0.8mgでジアゼパム5mgの等価の力に相当します。(アルプラゾラムが高力価できつい)
つまり、アルプラゾラム3.2mgは、0.8mgの4倍の量であるので、ジアゼパム20mg分服用していることになります。
減薬するときは、一律0.5mgづつ減薬しようとしても、ジアゼパムより力価の高いアルプラゾラムのほうが離脱症状が強くでる可能性があるので、アルプラゾラムの減薬ペースをゆっくりにするか、2-3で説明するように減薬の最初にアルプラゾラムをジアゼパムに変換してから行う手段がとられています。
2-2.ジアゼパム換算値
処方量を検討する指標として、「ジアゼパム換算」が利用されています。
これは、ジアゼパムの力価に変換したとき、果たして何mgの量になるのかをみるものです。
インターネット上に、換算値の変換表がありますが、下記のページで換算できます。
自分の処方されている薬の種類に、処方量を入力すると、ジアゼパムに変換した量が表示されます。
日本で、1日の処方限度がジアゼパム換算で15mgとなっていますが、それを超えていると注意が必要です。
処方量は少ないので安心と思っていても、計算するとかなりオーバーして処方されていたというケースもあります。
(医師は換算値を考慮していない場合が多いです。)
2-3.ジアゼパム変換
高力価の処方をされている場合は、低力価で半減期のより長いものへの置換がよいと考えられています。
これにより、体内からの消失が緩徐となり,消失時に生じる不快な退薬症状が軽減されることが期待されます。
そのため、半減期の長いジアゼパムが適しているとされ、最初はすべてジアゼパム系に薬を置き換えてから、減薬するといったパターンになります。
ただし、ジアゼパム依存になるといった見方もあるので、医師と相談しながらということになるかと思います。
例
アルプラゾラム2.4mg/日
↓ (2ヶ月かけて変換)
ジアゼパム30mg/日
↓ (2週間)
ジアゼパム28mg/日
↓ (2週間)
ジアゼパム26mg/日
↓
・・・・・・
↓
(0mg/日になるまで1年かかります)
2-4.薬が複数処方されている場合
副作用の大きい薬からやめていき、単剤処方を目指します。
(少し減らして体調とみあわせながら)
ベンゾ系が複数処方されている場合は、力価の強く、半減期の短いものから外していきます。
2-5.減薬ペース
ベンゾジアゼピンは、アルコール、覚せい剤並に依存症が強いのがやっかいで、特に長期服用者の方は、不安が強く減薬に不安を示す方が多いようです。
そのため、いっきに断薬する「急性離脱法」が良いという声もありますが、長期服用、処方量が多いとなってくると危険度が高くなり、パニックを起こして緊急入院となったり、後遺症がでるケースもあるようなので、ゆっくりが無難であるようです。
具体的には,2-4週ごとに,服用量の1/8~1/4ずつ,減薬・中止していくのが良いとされています。
減量により症状が再燃した場合には、前の用量に戻し,さらにゆっくりとしたペースで減量します。
2-6.減薬量の調整
薬は錠剤であるので、だいたい半錠にカットして減らしていく事が多いです。
しかし、力価の強い薬の場合は、少し減らしただけでもきつくなることがあるので、半錠カットでは量の調整が難しくなります。
その場合は、粉末にしたり水に溶かして、水溶液にすることで調整しやすくなるようです。
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減薬のつらい症状にも効果的
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