睡眠薬の歴史と作用と副作用(ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン薬、メラトニン受容体拮抗薬、オレキシン受容体拮抗薬)

向精神薬


はじめに

睡眠薬は、よく病院にいくと眠れないときに処方される向精神薬で、比較的なじみ深いものだと思います。
睡眠薬は「睡眠を改善する薬」といったイメージを持つ方もおられるかと思いますが、改善する薬ではなく、一時的に眠り易くする対症療法薬です。
睡眠薬は、一般的に現在はベンゾジアゼピン系ものが利用されていますが、依存性が強いので、常用すると手放せなくなる薬です。(華原朋美さんも2000年当たりに睡眠薬をラムネのように服用していたようで、相変わらず抜け出せないような感じで20年以上精神状態が不安定なようです。)
日本では薬局でも簡単に手に入り、安全な薬と言われていますが、アルコールと同じくGABA神経系に作用し、有害性、依存性もそれほど差はなく長期的に服用すると危険性を伴うことはあまり知られていません。
ここでは、睡眠薬に関して危険性も踏まえてみていきましょう。

睡眠薬の歴史

1-1.睡眠薬の登場

最初に登場した睡眠薬は19世紀に開発された「抱水クロラール」というものでした。
当時は演劇や小説に登場するまでになっていましたが、この薬は味と匂いが酷いこと、治療域と有毒域の間が狭いことなどから20世紀には バルビツール酸 系のものにとって代わることになります。

1-2.バビルツール酸系の登場(1920年~1950年)

バルビツール酸系は、酷い味がなく治療域が有毒域に近くないという点で1920年~1950年の間、唯一の睡眠、鎮静薬として使用されてきました。
一方で、バルビツール酸系は、治療域の狭さから当時は自殺企図のための一般的な方法で、自殺したマリリン・モンロー、芥川龍之介も「急性バルビツール酸中毒」でした。
(バルビツール酸系の薬はチオペンダール・ペントバルビタール・フェノバルビタールと最後は「ル」で終わるものが多いのが特徴です。)

昭和初期は、自殺した著名人がよく利用していた睡眠薬。

1-3.ベンゾジアゼピン系の登場(1960年~)

1960年代にはベンゾジアゼピン系が登場し、安全域が狭いバルビツール酸系から置き換えられていくことになります。
当初、この新薬は医療関係者の間で歓迎されますが、徐々に問題が発覚し、1980年代には依存性リスクが発見されます。
ベンゾジアゼピンは、英国にて14,000人の患者および1,800の法律事務所による史上最大の集団訴訟を引き起こしたという歴史を持っています。

1-4.非ベンゾジアゼピン系の登場(1980年~)

1980年ベンゾジアゼピン系も危険性が指摘され非ベンゾジアゼピン系が登場します。
しかし、これもベンゾジアゼピン系と大差がなく、別の手段が見直されるようになります。

1-5.新薬の登場(GABA系以外)

ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系の薬は共にGABA神経系に作用する薬でしたが、これらに代わる薬として、メラトニン受容体、オキシトシン受容体に作用する新薬が登場します。
これらの新薬は、副作用が低いことが期待されていますが、反面、睡眠が浅く、夢をよくみたり、昼間も眠たいといった症状がでやすい傾向にあるようです。

睡眠薬の分類

現在主に使われる睡眠薬の分類は、神経伝達物質の作用により下記のように分類されます。

・GABA受容体拮抗薬(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系)
・メラトニン受容体拮抗薬
・オレキシン受容体拮抗薬

2-1 GABA受容体拮抗薬(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系)

2-1-1.ベンゾジアゼピン系

現在、日本の病院でよく処方される睡眠薬はγ-アミノ酪酸(GABA)系の神経細胞GABAA受容体に作用する
ベンゾジアゼピン系
非ベンゾジアゼピン系

の睡眠薬です。

(バビルツールもGABA受容体に作用します)
GABAは、抑制系神経伝達物質で、副交感神経が高まることで睡眠作用、不安が和らいでいきます。

ベンゾジアゼピンはベンゼン環とジアゼピン環を中心とした科学構造をもち「BZD」とも呼ばれます。

ベンゾジアゼピン系科学構造

2-1-2.非ベンゾジアゼピン系

非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系の副作用を軽減することを目標に開発された薬で、イミダゾビリジン、ピラゾロピリミジン、シクロピロロンが、GABAA受容体に作用します。

しかし、効果はベンゾジアゼピン系とほとんど変わらず、効果が持続する時間で使い分けられています。
非ベンゾジアゼピン系は別名「Z薬」とも呼ばれます。

非ベンゾジアゼピン構造比較

左3つが非ベンゾジアゼピン系で右がベンゾジアゼピン系。構造は異なるが似た性質をもつ。

2-2 メラトニン受容体拮抗薬(ロゼレム)

夜暗くなると、セロトニンは松果体にてメラトニンに変換され、メラトニンがメラトニン受容体に作用することで眠くなります。
メラトニン受容体拮抗薬は、ラメニテオンがメラトニンの代わりにメラトニン受容体に作用することで眠気を誘います。

ラメニテオン の構造式

2-3 オレキシン受容体拮抗薬(ベルソムラ)

オレキシンは、視床下部から分泌される覚醒維持に関わるペプチドホルモンで、GABAやメラトニンとは逆に受容体への作用が減少することで睡眠が促されるようになります。
オレキシン受容体拮抗薬は、スボレキサントがオレキシンの受容体に作用するのを阻害する役割を果たし、覚醒を弱めて睡眠作用を高めます。

スポレキサントの構造式

3.睡眠薬の分類

睡眠薬は、「作用機序」と「効果時間」で分類されることがあります。

3-1 作用機序での分類

現在主に使われている睡眠薬の種類は、GABA受容体拮抗薬のベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系が豊富にありますが、メラトニン受容体拮抗薬、オレキシン受容体拮抗薬はそれぞれ1種類しかありません。
いずれの睡眠薬も、基本は神経細胞間にあるシナプス間隙の受容体に作用することで睡眠を促す薬です。

  アゴニスト
作用受容体
作用 代表的な薬 ()は商品名
バビルツール酸系
1920年代から1950年代半ばまで、鎮静剤や睡眠薬として実質的に唯一の薬。1960年以降危険性のため推奨されていない。
GABAA 抑うつ増加、振戦せん妄を引き起こしやすい、作用量と致死量が近く、高用量では死に至る

チオペンダール

ペントバルビタール

フェノバルビタール

ベンゾジアゼピン系

 

・1960年代にバビルツール酸系の代替品として登場。現在睡眠薬の65%が使われている。

・1996年WHOでは合理的使用は「30日まで」とされている

ベンゾジアゼピンGABAA ・抑うつ増加
・アルコールとの併用で呼吸中枢を抑制し死に至る可能性がある。
・常用により効果が弱くなる耐性が生じ数週間でほとんど効果がなくなるが、そのために多剤大量処方となりやすく、とりわけ長期間、高用量の服用で離脱症状が激しく生じるため、急な断薬は推奨されない
・レム睡眠、深い睡眠を妨げる

トリアゾラム(ハルシオン)
プロチゾラム(レンドルミン)
塩酸リルマザホン(リスミーなど)
ロルメタゼラム(エバミールなど)
エチゾラム(デパスなど)
エスタゾラム(ユーロジン)
フルニトラゼパム(サイレース、ロヒプノールなど)

ニトラゼパム(ネルボンなど)
クアゼパム(ドラールなど)
フルラゼパム(ダルメートなど)

非ベンゾジアゼピン系

・1980年代にベンゾジアゼピン系の代替品として登場。睡眠薬の30%が使われている。
・Zからはじまる物質名が多くZ薬とも呼ばれる

・イミダゾビリジン
・ピラゾロピリミジン
・シクロピロロン
GABAA
抑うつ増加
・高用量で使用した場合、顕著に健忘やごくまれに幻覚といった副作用を生じる。
・FDAに提出された臨床データでは偽薬に比べうつ病のリスクを2倍にすることを報告
・長期間の使用は自殺率を高める
ゾルピデム(マイスリー)
ゾピクロン(アモバン)
エスゾピクロン(ルネスタ)
メラトニン受容体拮抗薬
・睡眠作用は小さいが副作用も小さい
・数%使用されている。
ラメルテオン
/メラトニン受容体
体重増加 ロゼレム
オレキシン受容体拮抗薬 スボレキサント/
オレキシン受容体
  スボレキサント(ベルソムラ)

3-2 効果時間での分類

ベンゾジアゼピン、非ベンゾジアゼピン系は効果の違いにより下記のように分類されています。

・超短時間作用型
ハルシオン、アモバン、マイスリー、ルネスタ
・短時間作用型
デパス、レンドルミン、エバミール
・短-中時間作用型
リスミー
・中時間作用型
サイレース、ベンザリン、エミリン、ユーロジン、イソミタール
・長時間作用型
ダルメート、ソメリン、ドラール

ベンゾジアゼピン薬の使用量と安全性

4-1.ベンゾジアゼピン薬の使用量

日本で使用されている睡眠薬の約65%はベンゾジアゼピン系です。
下のグラフは1000人当たりのベンゾジアゼピン薬の国別消費量ですが、日本でのベンゾジアゼピン系の処方量は世界でも2番目となっています。(1位はベルギー)
しかし、最も多いデパスの使用量が含まれていないので、事実上1位であるのと、人口比では日本はベルギーの10倍はあるので日本は断トツに多い使用量の国家と推測されます。

4-2.ベンゾジアゼピン薬の安全性

ベンゾジアゼピン薬は

『副作用や離脱症状もなく安全です』

と医師からも処方されることが多く、睡眠薬を毎日のように服用している方も多いと思いますが、依存性、有害性はアルコールと覚せい剤(アンフェタミン)に近い領域にあります。

参考:wikiより

睡眠薬の副作用

最近は効き目が早く、短時間で眠りにつけるタイプが次々に登場しており、便利な薬になっている反面、 副作用は必ず存在します。

①依存症になりやすい
②耐性が付きやすい
③やめるとき激しい離脱症状が出る
④長期使用者は記憶障害、性的不能、怒りっぽくなる、気分の落ち込み

ベンゾジアゼピンは、短期的には有効ですが、1 – 2週間後には耐性が形成され、次第にGABA受容体が消滅していくため、長期間の使用には無効となってきます。
そのため、服用量を増加してしまい依存性に陥ってしまう危険性もあります。
最小の作用量で数日間に限って服用することが望ましい
と推奨されています。

とはいえ、多くの医師はこのことを患者に知らせず、服用を勧めるので注意が必要です。

・1カ月以内睡眠薬を摂取していた場合、自動車事故の増加
・睡眠薬の使用頻度の増加により死亡率が上昇する。
・2年半の追跡でがんを35%増加させる。
・高齢者への睡眠薬は転倒事故、認知症を増加させる。
・抑うつリスクの増加
・急性毒性
・他害行為、自殺行為、健忘
・依存症

離脱症状

アルコール・ベンゾジアゼピン・バルビツールのような鎮静催眠薬は、重篤な離脱症状などの深刻な身体依存を引き起こすことで悪名高いことで知られています。
処方が4週間未満の者については直ちに断薬が可能ですが、6ヶ月以上になると身体的、精神的な健康の悪化をもたらします。
徐々に睡眠薬から離脱した患者は断薬6ヶ月後には全般的に健康の改善がみられたという研究もあります。
ただし、大量投与を長期期間行ってしまうと、離脱作用が生じてくるため急な断薬は困難になってきます。長期服用者は突然の断薬は危険であるため、徐々に減量する処方計画が推奨されています。

離脱で最も一般的なものは不安で、不眠、消化器問題、震え、恐怖、激越、筋けいれん易刺激性、発汗、離人症、現実感喪失、刺激への過感受性、抑うつ、自殺行動、精神病、発作、振戦せん妄高用量のベンゾジアゼピンを中止する場合には、発作、せん妄、精神病が起きる場合がある

7.ベンゾジアゼピンとの闘病ブログ

・人生の変転・下山日記様のブログ

デパス0.5mg/2~3錠を毎日10年間飲み続け、病気もなく健康に暮らせていたが突然症状がでてきた。
上記の副作用以外にも保水機能が低下し、耳鳴り、ドライアイ、ドライマウス、口内炎、顔と手足はべたべた、肉が削げ皮膚にも皺がでてくるといった症状がでてくるようです。
(恐らく亡くなられたかも・・)

・治らんなぁ様のブログ様

断薬し3年目で離脱症状はなくなっても薬の誘惑との葛藤状態。

・医者を信じるな!減薬、断薬挑戦ブログ様

・ベンゾ回復への日記様

断薬

断薬方法には下記の3通りの手法があります。
服用期間、体質、薬の種類等によって減薬日数は異なるため調子をみながらゆっくりと行うしかないようです。

・ベンゾジアゼビン断薬のマニュアル

断薬のマニュアルとしてアシュトンマニュアルがよく知られているので、参考にしてください。

まとめ

睡眠薬は睡眠を改善する薬ではなく、アルコールと同じで一時的に眠らせる薬です。
何度も服用すると耐性がつき、睡眠の質を低下させ、量を増やしても眠りにくくなります。
安全と思って長年服用し続けると急にひどい副作用に襲われ、断薬も困難になるものなので必要最低限に抑えましょう。

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