自立支援医療制度とは
精神疾患の治療はゆっくりと長期的に行っていくものがほとんどであるため、長期にわたる通院が必要となります。特に休職すると、収入が減少する上、定期的に診断が必要となってくるため経済面においても不安が生じます。「自律支援医療制度」は、病院に入院しないで行われる治療(投薬治療、デイケア、外来、訪問看護等)の自己負担額を軽減できる制度です。
この制度を利用すると、精神科通院の経済的負担が大きく軽減されます。
投薬治療から解放された後でも、私は大きな病院施設に通いデイケア、リハビリ(作業所通いなど)として利用していましたが、自立支援医療制度が役に立ちました。休職や無職中は経済負担が大きいので病院の支援制度を利用していくといいでしょう。
※デイケアなどは大きな病院にしかないので、近くにあれば転院してみることもおすすめします。
負担額
自立支援制度をしない場合の自己負担額
公的医療保険による医療費の自己負担額は小学生~70歳未満の方は通常3割となっています。
・小学生から70歳未満の方は:通常3割負担
・小学生未満の子供、70歳~75歳未満:2割負担
・75歳以上:1割負担
自立支援制度を適用した場合の自己負担額
自立支援制度の併用により、原則1割まで自己負担が軽減されます。
ただし、所得が一定以上ある方は基本的には自立支援医療を受けることができません。
医師が「重度かつ継続(後に説明)」に該当すると判断すれば受けることができ、精神疾患の場合はこれに当てはまることが多いです。
さらに世帯所得(納税額)による区分が設けられており、所得が一定未満の人に対しては月あたりの自己負担額に上限が設定されています。上限を超えた分は公費で賄われるため、ひと月に上限額以上の医療費を支払う必要がなくなります。
自己負担額と世帯所得の関係は以下の表のようになっています。
所得区分 | 世帯所得状況 | 月額負担額 | 「重度かつ継続」 の負担額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | 0円 |
低所得1 | 市町村民税非課税であり、本人所得80万円以下 | 2,500円 | 2,500円 |
低所得2 | 市町村民税非課税であり、本人所得80万円以上 | 5,000円 | 5,000円 |
中間所得1 | 市町村税の納税額 3万3000円未満 |
「高額医療費制度」 の限度額が上限 |
5,000円 |
中間所得2 | 市町村税の納税額 3万3000円~23万5,000円未満 |
10,000円 | |
一定所得以上 | 市町村税の納税額が23万5,000円以上 | 対象外 | 20,000円 |
例
月あたりの上限額が5,000円と設定されている場合に、病院の診療で1,500円、薬局の処方で7,000円、合計8,500円の費用が発生したとします。このとき上限額は5,000円と設定されているため、超過した3,500円については公費で支払われることになり、自己負担にはなりません。
「重度かつ継続」となる対象者
自立支援医療に適用される「重度かつ継続」の対象となる精神疾患として以下のものになります。
・統合失調症、妄想性障害
・気分障害(うつ病、双極性障害)
・知的障害
・自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群など)
・パーソナリティ障害
しかしそれ以外でも、以下のもので、症状・経過によっては適用となります。
・認知症、高次脳機能障害など器質性精神障害
・アルコール・薬物などの物質使用による障害
・てんかん
・不安障害(不安神経症)
・摂食障害(過食症・拒食症)
医療対象
適用となる医療の対象としては、外来で行われる以下の医療が対象となります。
訪問介護を利用する場合、本人の同意に基づく契約と、主治医の指示書が必要です。
介護保険での利用の場合は、内科医の指示書でも構いませんが、自立支援で訪問介護を利用する場合は、精神科の病院、クリニックの医師の指示書を記入してもらう必要があります。
・診察費
・お薬代金(精神治療薬)
・デイケア
・訪問介護
自律支援制度の申請方法
申請場所
申請場所は、市区町村にある市役所の障害福祉課などが窓口になります。
手続きの際は、自治体の定めた「指定医療機関」の中から病院と薬局を指定し、そこでのみ制度の適用が受けられます。現在通院している病院や薬局が「指定医療機関」になっているかは、役所か病院などに問い合わせることで確認してみましょう。
また、大きな病院では、市役所でなく病院窓口で申請できるところもあります。その場合は診断書も必要ありません。
大きな病院では、デイケアが整っていたり、就労支援制度も整っているなどメリットも多いので近くにそのような病院があるか探してみるといいでしょう。
手続き方法の流れ
一般的な手続き
1.主治医にまず相談
2.確認がとれたら役所で申請用紙をもらう。
3.主治医に申請用紙を記入してもらう。(1~2週間程度)
4.障害福祉課等の窓口で申請。(窓口は役所により異なる)
5.自立支援医療受給者証と自己負担上限額管理票が届く。(申請後1か月程度)
6.受診する毎に自立支援医療受給者証を掲示すると自立支援医療負担額での適用額となる。
大きな病院での手続き(病院により異なる)
1.受付窓口に相談し、申請用紙に記入
2.以後、自立支援医療負担額で会計処理
更新
自立支援医療受給者証の有効期限は1年間です。
更新の場合は、有効期限の3か月前から主治医に再度申請用紙を記入してもらうことができます。
ただし病状や治療方針に大きな変更がない場合は2年に1回の更新でも認められることがあります。
- 申請書
- 印鑑
- 診断書(※2年に1回必要)
- 受給者証:新しいものと交換する必要があるため、古いものを市役所に提出します。
- 保険証
- マイナンバーが分かるもの
ただし全国すべての指定医療機関でこの方法が通じるわけではないため、医療機関・薬局にあらかじめ問い合わせておくと良いでしょう。
更新が間に合わなかった場合
有効期限終了までに更新ができなかった場合は「再開申請」の手続きが必要になります。
この場合は「医師の診断書」が必要です。
再開申請しない限りは、期限が切れた日から再開日まで医療費は通常の3割負担となります。
参考
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