向精神薬の長期服用の影響~症状悪化と離脱症状のメカニズム~

向精神薬


はじめに

精神疾患の症状を和らげてくれる向精神薬は、服用初期段階では大変ありがたい存在です。
医師からは、
「副作用もなく、安全な薬です」
と処方され、安心して使ってしまう向精神薬ですが、長期で服用していくと、副作用による症状悪化だけでなく、薬を途中で中断すると現れる離脱症状(禁断症状)が襲いかかります。
離脱症状は、副作用とは異なる、さらに激しく苦しい症状で、一旦、この罠にはまってしまうと、抜け出すことが困難になる症状です。
この苦しみは、経験したことのある人にしか分からないでしょう。
薬に慣れてしまうと、たった半錠減薬するだけでも身体が「ずしん」と重く感じ、寝たきりで過ごさなければならなくなる場合もあります。
医師は、副作用だけでなく、離脱症状のことについては全く知らせてくれません。

この離脱症状のせいで、薬の呪縛から抜け出せなくなり、永久に服用を余儀なくされ、次第に脳がじわじわと破壊されていくのが向精神薬の恐ろしいところです。
それは、信頼されるような医師が処方するものであることと、マスコミによる
「安全であり、安心して使用できる」
といった刷り込みであることから安易に服用してしまうためです。
危険とされる麻薬や覚せい剤の使用よりも、むしろ恐ろしい存在と考えることもできます。
精神疾患を治してくれるであろうと期待していた向精神薬も、いつのまにか、薬との格闘になっていきます。
この悪魔のような離脱症状が、長期服用していくとなぜ起こるのか、神経細胞の働きの観点からみていきます。

本内容は下記資料を参考にしています。
参考資料:アリュトンマニュアル ヘザー・アシュトン教授 (DM, FRCP) 2002 年8 月改訂


向精神薬の作用機序

向精神薬(抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬など)は、脳内の神経細胞間の情報伝達を担う神経伝達物質の機能を促進、抑制することで、精神状態をコントロールする薬です。
薬の種類によって、制御する神経伝達物質の種類は異なります。

・抗精神病薬(統合失調、双極性障害用)・・・ドーパミン抑制
・抗パーキンソン病薬・・・ドーパミン促進
・抗不安薬、睡眠薬(不安を静める、不眠症)・・・ドーパミン、ノルアドレナリン分泌抑制
・抗うつ薬(うつ病)・・・トランスポーター阻害しセロトニン、ノルアドレナリン分泌促進

詳しい作用機序については、こちらをご覧ください。

向精神薬を長期服用するとなぜ悪化するのか?

例えば、睡眠薬、抗不安薬に含まれるベンゾジアゼピンは、脳内のGABA神経細胞間に存在する、ベンゾジアゼピン受容体上の結合サイトに付着することで、GABAの活動を腑活しノルアドレナリン、ドーパミンを抑制することで鎮静効果を高めます。

しかし、長期服用すると、しだいに脳は
「GABAが過剰になっているのではないか?」
と判断し、受容体の数を減らしていきます。
その結果、脳のGABAへの感度が全般的に低下、つまり興奮性が高まっていくため、ストレスに対する感度が増大した状態におかれていくことになります。

受容体数の減少につれ、薬の効果も実感できないようになり、処方量が増えていきます。
また、ストレスに対する感度が増大し交感神経が高ぶることで不安が強くなり、動悸、パニック状態、対人恐怖といった症状を引き起こす可能性も高まってきます。

抗うつ薬の場合も同様に、受容体の数が減少することで、セロトニン、ノルアドレナリンの減少が顕著になり、鬱症状の落ち込みがひどくなっていきます。

抗精神病薬はドーパミンを抑える薬ですが、統合失調症者の場合、ドーパミンが過剰になっているという仮説に基づいて処方されています。
抗精神病薬の場合は、
「ドーパミンの量が減少していないか?」
と判断し、睡眠薬、抗うつ薬とは反対に受容体を増やしていきます。
結果的に、ドーパミン過剰状態が起こり、統合失調症の症状を増進していくことになります。

最初の頃は向精神薬の効果は高く、症状を和らげてくれるため、
「薬を飲めば治る」
と勘違いしてしまいがちです。
症状が悪化しても、それがストレスの強さや、精神疾患の症状であると思い込み、薬自体による症状の悪化に繋がっていることに気づいていない方も結構多いようです。

また、本来なら精神疾患でもないのに長期服用すると、本当の精神疾患になるのも、この受容体の増減と関わっているものと考えられます。
初めは適応障害、不安障害、抑うつ、ただの過労といった軽い診断だったのが、ただの薬害(医原病)であるのに
「実は双極性障害だった」
「統合失調症だった」
と誤魔化され、さらに薬が追加されているケースが近年多くみられるようになりました。

20年前まで、統合失調症、双極性障害は精神病とされ先天的なものでごく稀な症状で、神経症と分類されていたうつ病とは全く違う病気と考えられていたのですが、近年はその境界線もあいまいにされうつ病者を超える勢いで増加しつつあります。

急に服薬を中断すると危険な理由

薬がどんどん追加され、
「症状がよくなるどころか、悪化している・・」。

必ずといっていいほど様々な副作用が起こり悪化することが多い向精神薬ですが、その原因が薬によるものであることが分かると、いざあわてて断薬することを試みる方もいます。
しかし、向精神薬は、薬を途中で急にやめてはいけません。

薬に慣れてしまった段階で急に止めると、副作用の症状とは異なる激しい離脱症状が襲ってくることが多いからです。
薬の処方量が少ない、処方日数が短い時は、すぐ止めることが出来る場合もありますが、大体の人は医師の言葉を信じてしまうため、服用を続けてしまいます。
離脱症状が襲ってくるようになると、その苦しさから1日耐えることも辛く、寝たきり状態になることもあります。
精神疾患そのものの症状よりも薬の服用のせいで、仕事や家庭を失う方も多いのです。
うつ病のブログを書かれている方の経緯を見てみると、最近は仕事のパワハラや過労で向精神薬を服用し、体調を崩して退職、入院、無職で就労移行活動を行いながら、最終的に生活保護に頼らざるえないところまで追いつめられていくケースをよくみかけます。

なぜ、離脱症状が起きるのか?
それは、長期服用の結果起こる、受容体の増減、機能異常が起こっているためとされています。
受容体の数は、薬に慣れた状態に適応した数であるため、急に薬が切れてしまうと、急激に受容体の数は変化できないため暴走してしまいます。
急な減薬は、飛行機がエンジンを切って急降下するハードランディングのような危険行為です。
急に止めて、病院に搬送されたり、自殺衝動に駆られる方もいます。
その影響は、薬の量に比例していくため、服薬期間が長い人ほど注意が必要です。

減薬はゆっくりと行う理由

長期服用により損なわれた受容体の元での急激な断薬は、激しい離脱症状を生じるため、離脱時は、飛行機がソフトランディングするように、薬の量を減らし、受容体の回復を期待しながらゆっくりと行うことが大切になってきます。

「薬が精神疾患を治療する」
というイメージをもっている方は、
「薬を減らすことで症状が改善される」
と思考を転換していくことが必要です。

上手くいけば、減薬後は症状は改善されますが、長期で大量に服用している場合などはなかなか修復できなかったり、神経細胞が破壊されていたりするので後遺症が残る可能性があります。
そのため、単剤で処方量が少ないうちに断薬することが賢明と考えられます。

薬は断薬可能なの?

時間をかければ、減薬で調子がよくなった方が多いようです。
ただし、後遺症がでているようなので、他の代替療法を利用し維持しているようです。

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